大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)1187号 判決

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人所有の別紙目録記載の不動産につき昭和二十五年九月十九日なした差押処分はこれを取り消す。」との判決を求め、被控訴人の指定代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、いずれも原判決の事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。

(証拠省略)

三、理  由

先ず被控訴人の本案前の抗弁につき按ずるに、国税滞納処分に関し異議ある者は当該処分をなしたる税務署の署長に対し再調査の請求をなし、その再調査決定に対し異議ある者は更に国税局長に対し審査の請求をなし得ること、再調査の請求の目的となる処分の取消又は変更を求むる訴は右審査の決定を経た後でなければこれを提起し得ざることは、国税徴収法(昭和二十五年四月施行)第三十一条の二第一項本文、同条の三第一項前段、同条の四第一項本文の各規定により明らかであるが、再調査の請求ありたる日より六箇月を経過してなお再調査の決定の通知なきとき、審査の請求ありたる日より三箇月を経過したるとき、又は再調査の決定若くは審査の決定を経ることにより著しき損害を生ずる虞あるとき、其の他正当なる事由あるときは再調査の決定又は審査の決定を経ずして訴を提起し得ることも、また同条の四第一項但書の明定するところである。しかるに本件差押処分の目的物件は控訴人の精米業経営の基盤をなすもの、これが公売せられんか、著しき損害を生ずるに至るべきことは原審における控訴本人鈴木善一の供述によりこれを窺い知り得べく、且つ原審における被告代表者平野吉之助の供述によれば、再調査、審査の決定には二年以上を要することがあることが推測し得られるから、かかる事情は控訴人が再調査又は審査の決定を経ずして直ちに本訴を提起するにつき正当の事由ある場合に該当するものと認められるから被控訴人の抗弁は採用し難い。

よつて進んで本案につき審究するに、控訴人主張の差押及び再調査の請求のあつた事実は当事者間に争いない。而して成立に争なき甲第五号証によれば控訴人が提出した昭和二十四年分所得金額更正(決定)に対する審査請求は氏家税務署長を経由して関東信越国税局長に進達され、その審査決定(所得金額十九万八千五百円と決定)が昭和二十六年五月二十一日附で氏家税務署長を経て控訴人に通知せられたことが認められるので、右審査請求は被控訴人においてこれを握り潰したものでもなければ被控訴人限りで処理したものでもないこと明らかである。もつとも右審査請求の後被控訴人は右更正決定に脱漏があつたことが判つたので昭和二十五年六月二十九日附をもつて所得金額を一九八五〇〇円税額を五二七五円と再更正したところ、この決定に対し更に控訴人は同年七月二十六日附をもつて同月三十一日関東信越国税局長宛に再審査の請求をしたものを税務署長限りで処理したことは被控訴人の自陳するところであるが、所得税法第四十八条及び附則第十一項によれば、再更正決定に対する再調査の請求に対しては税務署長が決定をなし得る旨規定してあり控訴人の右再調査の請求は再調査の請求と解すべきであるから、被控訴人が関東信越国税局長に進達せずして税務署長限りで処理したとしても何等違法ではない。

次に控訴人は、「差押には納税義務者の任意履行意思に期待することができないことや督促を受けても期限迄に完納しないため必要ありと認められる要件を具備しなければならない」と主張するが、原審における被告代表者平野吉之助の供述によれば、控訴人に対しては差押前に好意的文書をもつて自発的納税を促し、更に督促状を出して納税を督促していることが認められたので差押の前提要件を欠いた違法は存しない。

更に控訴人は、「滞納税金の徴収に必要な限度を越えて税額の十倍を超過する約三十万円以上の取引価値ある物件に対しなした本件差押は違法である」と主張するが、成立に争のない甲第四号証によれば、昭和二十六年二月当時における本件建物の評価格は金四万八千六百円同畑の評価格は金八千四百二十四円であることが認められ、右認定に反し本件物件の評価格が金二十五万円となる旨の控訴本人(被告本人)の供述はにわかに信用し難きところである。而して本件滞納金額は四万五十円であることは成立に争ない甲第三号証の三により明らかであるから、滞納額より差押物件の価格が一万七千余円超過しているのであるが、滞納処分費等の加算を考慮するときは、右の如き程度の超過は止むを得ざるものと言わざるを得ない。もつとも成立に争なき甲第六号証によれば、本件物件の昭和二十七年に入つての評価格は住家と納屋のみにても九万七千四百四十円であることが認められるが、本件物件の価格が物価昂騰の趨勢に従い漸次高騰したとしても、本件差押処分はこれがために違法を来たすことなきものと解すべきであるから、右控訴人の主張も採用し難い。

しからば控訴人の本訴請求はその理由のないことが明らかであるから、これを棄却すべきである。

よつて右と同趣旨に出た原判決は相当であり、本件控訴はその理由がないから民事訴訟法第三百八十四条第一項第九十五条第八十九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 大江保直 梅原松次郎 猪俣幸一)

(目録省略)

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